今月は既に5件ほど、乳癌の人に乳房再建を行っています。
二期再建(乳癌切除後しばらく経過して再建したい人)の場合は、当院で全身麻酔にて行っていますが、一期再建(乳癌切除と同時に再建をしたい人)の場合は、院長が済生会病院に出張手術におもむきます。
出張手術をする際には、クリニックの外来を閉鎖するため、予約希望の患者様には本当に迷惑おかけしています。
また、呼び出し時間の前後が多少あるため、急な予定変更をお伝えせざるをえなかった方など、この場でお詫びします。
そんなこんなで、出張手術はなかなか周りを巻き込んでいるわけですが・・・
普段は忙しく、なかなかお話をする機会のもていない乳腺外科の先生と手術をしながら意見交換をできるので、とても貴重な時間です。
その際に、こんなお話をされました。
「外来に来られた患者さんの胸が四角くて異常に硬い。
何か注入したかを確認したけど絶対ないと言っている。
画像を見せ、説得をしたところ「手術台に横になっている間に何か入れられたけど、何かわからない」といっていますがなんですか?
何かわからなくてとても困っています。
ヒアルロン酸ではないと言っています。」
と。。
「おそらく、ヒアルロン酸ではないのであれば、 アクアミドを注入されたと思いますが・・」
「なにそれ?」
「最近長持ちするということで、一部の医師が行なっている治療ですが、安全性の確率がまだなので私は使用していません。ヒアルロン酸のように溶解するのも無理なものです。」
「そんなのいれて大丈夫なの?」
「使用している医師は大丈夫だと思っているようです」
としか、言えない。。。
「もう少し先生患者さんにそこらへんを情報提供してあげた方が良いのでは?」
と言われたので書いてますが、なかなかこのあたりの話は微妙で話しにくいのが正直なところです。
その注入物は、少し発癌性が報告されているものです。
ただ、レベル的には非常に低い(熱いものを飲む、焦げた食品を食べる程度)ので、健康被害はないであろうとされていますが、それが数年体内にある影響はまだわかっていません。
最近形成外科の管理している美容外科学会から注意喚起・アンケート調査が送られてきています。
本当に大丈夫なのかを検証していく方向のようです。
メール内容抜粋です。
異物による豊胸術は古い歴史の中でその安全性が常に問われ、豊胸材料の変遷を見てきました。そのような中で現在ではシリコンインプラントによる豊胸術が世界的にも一般化しております。
一方、現在でもその手技の容易さゆえに異物の注入による豊胸術が行われておりますが、その安全性は問題であり長期的に身体への影響は無視できないであろうと言われております。
つきましては、最近アクアフィリングによる豊胸術が一部の医師により行われておりましたが、その安全性の担保が確保できず米国ではFDAがその使用を認可しておりません。
韓国乳房美容再建外科学会でも、長期にわたる安全性が証明されるまではアクアフィリングの豊胸術への使用に反対する見解を表明しており、JSAPSではこの見解を重視し昨年、会員への注意喚起をホームページ上に掲載しております。
またJSASでもこの問題は取り上げられ、昨年1月の理事会において使用すべきではないと見解を決議されております。
このような状況の中で、現在われわれがなすべきことはこの物質(アクアフィリング)による合併症一例一例を積み重ね、アクアフィリングによる豊胸術の問題点を報告し、抽出することが大切かと考えております。
正直まだわからないというのが、結論なので変に不安を与えてしまった方申し訳ないです。
豊胸を受ける際はきちんと相談、信頼できる医師に行ってもらってくださいね。
あと、乳癌検診もちゃんと受けましょう。
豊胸は、インプラントが形的には一番綺麗で柔らかいと思います。
挿入する際も、3cm以上切ることもないですし、乳腺下挿入であれば局所麻酔(一部静脈麻酔)でも行うことができます。
抜去したい際も、局所麻酔で同じ傷からアプローチ可能です。
大きく長持ちする胸を希望する際は、お勧め第一選択はインプラントバックですよ。
最近のは本当に柔らかいと思います。
ヒアルロン酸は吸収されることを理解し、あまり大きなサイズアップは考えていない方などには気軽に受けられる方法ではあります。
当院では4種類のヒアルロン酸から選んでいただいています。
ただ、乳腺が小さい方は硬さがきになると思いますのでやっぱりインプラントをお勧めします。
どちらにしても、一番大事なことは、豊胸した後もきちんと一年に一度は執刀医診察を受けて、心配事を相談できる環境を整え、聞きたいことはちゃんと聞いて理解した上で処置を受けましょうね。